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ビタミンDの必要性における東京慈恵会医科大学付属柏病院の発表!!

 ★ビタミンDは骨を丈夫にするために必要なホルモンである。しかし、日本人の8割でビタミンDは不足しており、4割で欠乏していると言われている。ビタミンDが不足すると血中カルシウム濃度を維持するために副甲状腺ホルモンが増加する。副甲状腺ホルモンは骨からカルシウムを放出してカルシウム濃度を維持する。ビタミンDを食事からは十分に摂取することは困難で、紫外線に当たることにより皮膚で合成される。病院で処方できるビタミンDは活性型であり、医師の管理下に内服しないと副作用の危険がある。ビタミンDサプリメントは天然型のビタミンDなので補充する危険は少ない。 ここでは私の調べたビタミンDの基礎知識を述べる。

 ビタミンD不足に対処するために、諸外国で、国民のビタミンD濃度を高めるために、食品にビタミンDを入れる政策が行われている。政策としてのビタミンDの栄養強化は、住民のビタミンDの状態を改善するための効果的なアプローチであり、これは既に様々な国で導入されている。ビタミンD治療の安全性、ビタミンD摂取量と25(OH)Dレベルの用量反応関係、およびビタミンD強化の有効性に関するデータに関する知識の最近の蓄積は、同様の費用対効果の高いアプローチで、公衆衛生を改善するためにビタミンDの栄養強化を導入および変更する、強固な根拠を提供している。

 ビタミンD欠乏はくる病と骨軟化症のような筋骨格疾患に関連する可能性がある。しかし、ビタミンDサプリメントは骨外性疾患(例えば気道感染症、喘息悪化、妊娠合併症と早死に)を防止もするかもしれない。ビタミンDは実際には独特の代謝で、主に日光(すなわち、紫外線B放射線:日焼けマシンもB波放射)の影響を受けて皮膚で合成から得ており、栄養による摂取が比較的小さな役割を伝統的に演ずる。ビタミンDの食事のガイドラインは、血清25-ヒドロキシビタミンD(25[OH]D)濃度がビタミンDの状況を評価するのに用いられるコンセンサスに基づく。目標濃度で≥25から≥50nmol/L(≥10-≥20ng/mL)にわたっていて、1日ビタミンD摂取量10~20μg(400-800国際単位)と一致して推薦された。大部分の住民は、これらの推薦された食事のビタミンDの必要量を満たすことができない。ヨーロッパでは、それぞれ、25(OH)D濃度<30nmol/L(12ng/mL)と<50nmol/L(20ng/mL)は一般住民の13.0と40.4%に存在する。ビタミンDの公式に推薦された食事の参照摂取量と一般住民のビタミンD不足の高い確率間のこの相当なギャップは、保健当局からの行動を必要とする。更なる屋外活動によるより健康的なライフスタイルの普及と最適栄養は、明らかに正当化されるが、ビタミンD欠乏はなくならない。ビタミンD補助剤の摂取は、比較的きちんと摂取しないと制限される(特に低社会経済地位の個人)、過量服用する可能性がある。系統的ビタミンD食物強化は一般住民でビタミンD状況を改善する効果的アプローチである、そして、これは諸外国ですでに導入された。ビタミンD治療の安全性の我々の知識の最近の進歩は、ビタミンD摂取量と25(OH)Dレベルの用量反応関係ならびにビタミンD強化の効果に関するデータは、この様に費用効果がよいアプローチで公衆衛生を改善するためにビタミンD食物強化を導入し、修正するためのしっかりした根拠を提供する。
ビタミンD血中濃度が25(OH)D=20ng/mlより低下すると、死亡危険性が急速に増加する。米国国立がん研究所(NCI)によると、自然界ではごくわずかな食品にビタミンDが含まれている。脂肪の多い魚(サケ、マグロ、サバなど)と魚の肝油の肉は最高の供給源である。少量のビタミンDは、牛の肝臓、チーズ、卵黄に含まれている。これらの食品に含まれるビタミンDは、主にビタミンD3とその代謝物25(OH)D3の形である。いくつかのキノコは、さまざまな量のビタミンD2を提供する。制御された条件下で紫外線にさらされることからビタミンD2のレベルが高められたキノコも利用できる。強化食品は、アメリカの食事でビタミンDのほとんどを提供する。たとえば、米国のほとんどすべての牛乳は、100 IU /カップ(2.5μg/カップ)で自発的に強化されている。カナダでは、牛乳は法律によって、530 IU / 100 g以上(13.25μg/100g)のマーガリンと同様に、35~40 IU / 100 mL(0.875-1ng/100ml)で強化されている。1930年代には、くる病と戦うために米国でミルク強化プログラムが実施され、その後主要な公衆衛生問題となった。チーズやアイスクリームなど、牛乳から作られた他の乳製品は、通常強化されていない。すぐに食べられる朝食用シリアルには、多くのブランドのオレンジジュース、ヨーグルト、マーガリン、その他の食品と同様に、ビタミンDが含まれていることがよくある。植物乳の代替品(大豆、アーモンド、またはオート麦から作られた飲料など)は、多くの場合、ビタミンDで強化牛乳に含まれる量(約100 IU(2.5μg)/カップ)まで強化されている。 栄養表示ラベルに実際の量がリストされている。米国とカナダの両方で、ビタミンDを含む粉ミルクの強化が義務付けられている。米国では40~100 IU (1~2.5μg)/ 100 kcal、カナダでは40~80 IU (1~2μg)/ 100 kcalである。
米国国立がん研究所(NCI)によると、ビタミンDは脂溶性ビタミンである。幾つかの食品に含まれており、サプリメントでも摂取できる。ビタミンDは日光(日焼けマシン含む)に当たることにより皮膚で作られる。日光や食事やサプリメントで摂取するビタミンDは生物学的に不活性型であり、体内で2回の作り替え(水酸化)を経て活性型となる。
十分なビタミンDがないと骨は細く、脆く、いびつになる。十分なビタミンDは小児でくる病を予防し、成人で骨軟化症を予防し、カルシウムとビタミンDは高齢者の骨粗鬆症を予防する。
米国国立がん研究所(NCI)によると、骨および一般的な健康のための25(OH)D(ビタミンD)の最適な血清濃度は確立されていない。これらは、選択された生理学的意義に応じて、人生の各段階で異なる可能性がある。また、血清25(OH)DはビタミンDへの暴露のバイオマーカー(太陽、食物、および栄養補助食品から)として機能するが、どのレベルが健康への影響のバイオマーカーとして機能する範囲かは明確に確立されていない。
血中25(OH)D(ビタミンD)濃度が低下する、または血中カルシウム濃度が低下すると、副甲状腺ホルモン(PTH:パラソルモン)が分泌され、小腸からのカルシウムの吸収促進、腎臓からのカルシウム再吸収、骨からのカルシウム動員(放出)を行い、血中カルシウム濃度を上昇させる。また、副甲状腺ホルモン(PTH)は腎臓に作用し、25(OH)Dから1,25(OH)2Dの産生を促進する。
1.25(OH)2Dや血中カルシウム濃度の上昇は、副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌を抑制する。ビタミンDは、脂溶性ビタミンであり、たんぱく質と結合して、ビタミンD、ビタミンD( 25(OH)D )、ビタミンD( 1,25(OH)2D)として血液中に存在する。

  1. ビタミンDは血液中のカルシウムとリンの濃度を調整する。

  2. ビタミンDは重要なホルモンである。

  3. 骨は常にリフォームを繰り返している。つまり、骨は常に骨吸収(破骨)と骨形成(造骨)を繰り返し、新しい骨に作り替えられているので、材料となる血液中のカルシウム量は重要である。

  4. ビタミンD(1,25(OH)2D)は腸管よりカルシウムとリンの吸収を促進する。

  5. ビタミンD(1,25(OH)2D)は骨に作用して、カルシウムやリンを効率良く骨に蓄積する。

  6. ビタミンDは食品として摂取するか、日光に当たり皮膚で合成するか、サプリメントとして摂取される。

  7. 1,25(OH)2Dは活性型ビタミンDと呼ばれ、25(OH) Dから作られる。また、薬物として処方される。

  8. 1,25(OH)2Dの血中濃度は、25(OH) Dの約千分の1、20-70pg/mlである。

  9. 25(OH) D(ビタミンD)の血中半減期は約3週間から30日、活性型ビタミンD(1,25(OH)2D)の血中半減期は約1日である。

  10. 25(OH) Dの血中濃度測定は骨粗鬆症に対し2018年9月に保険収載された。

 ★.骨以外部位でのビタミンDの効用

 ビタミンDは骨の成長や再生だけでなく、細胞増殖、神経筋、免疫機能、炎症を変化させている。最近の多くの研究では、ビタミンDの欠乏は、呼吸器感染症や呼吸器疾患、自己免疫疾患、各種がん、糖尿病、痴ほう症、うつ病、妊娠結果に関連する可能性がある。
秋葉直志、浦島充佳らは報告した。肺がんに対する二重盲検ランダム化試験を実施し、非小細胞肺がん患者において、ビタミンDサプリメントは、低25(OH)Dレベル<20ng/mLで、初期肺腺がん患者の生存を改善した。
主なビタミンDの作用は、ビタミンD受容体(VDR)を介した1,25(OH)2Dの作用である。VDRは全身の組織にあり、小腸、腎臓、骨においてカルシウム代謝調節を行っている他、細胞増殖、分化調節作用、免疫調節作用、骨格筋機能、血圧調節作用、心血管系疾患関与などを行う。
25(OH)Dは活性型ビタミンDではないが、PTH分泌抑制作用、骨折転倒予防、心血管系、免疫系疾患との関係が疫学研究で数多く報告されている。
多くの疾患と25(OH)D濃度低値との関連が示されている。その中には、癌、心血管イベント、結核、認知症、うつ病、高血圧、メタボリックシンドローム、肥満、2型糖尿病などがある。しかし、ビタミンD介入により改善効果が示されたものはほとんどない。ビタミンD不足や欠乏は原因ではなく、疾患に随伴する結果に過ぎないという考え方が一般化しつつある。

 ★.血液中カルシウムの調節

PTH (副甲状腺ホルモン)、ビタミンD、カルシトニン(甲状腺ホルモンの一種).PTH(副甲状腺ホルモン)とは、

  1. PTH(パラソルモン)は副甲状腺から分泌される副甲状腺ホルモンである。

  2. カルシウムが低下するとPTHの分泌が促進される。

  3. PTHの作用

    ◎骨からカルシウムを放出する。

    ◎腎臓でのカルシウムの排出を抑制する。

    ◎腎臓でのビタミンDの活性化を促進する。

    ◎血清カルシウムが低下するとPTH分泌が亢進する。

    ◎持続的にPTHが分泌されると、骨吸収が骨形成より強く、骨量は低下する。

    ◎PTHの上昇は一般的に骨密度減少速度の増加と骨折危険度上昇をもたらす。

    ◎薬剤として間欠的にPTHを投与すると、骨形成が骨吸収を上回り、骨量は増加する。


 ★カルシトニン(甲状腺ホルモンの一種)

 ◎Ca2+ 低下作用

 ◎食後の血中Ca増加によって分泌され、血中Ca濃度を下げる◎

 ◎骨へCa2+沈着:骨へのリン酸Caの沈着を促進させ、血中Caイオンを低下

 ◎尿へCa2+排出

 ★高カルシウム血症の症状

悪心、嘔吐、食欲低下、口渇感、多飲、多尿、脱力、意識障害。

 ☆ビタミンD過剰による健康被害

 ビタミンDの過剰により、高カルシウム血症が起こり、食欲不振、体重減少、多尿、不整脈などの症状がある。より重症なものでは、血管や組織の石灰化が起こり、心血管や腎臓に障害が起こる。腎結石の頻度が増す可能性がある。

 ★ 過剰ビタミンDによる健康被害
米国国立がん研究所(NCI)によると、ビタミンDの毒性としては、食欲不振、体重減少、多尿、不整脈などの非特異的な症状を引き起こす可能性がある。さらに深刻なことに、カルシウムの血中濃度を上昇させ、血管や組織の石灰化を引き起こし、その後、心臓、血管、腎臓に損傷を与える。閉経後の女性によるカルシウム(1,000 mg /日)とビタミンD(400 IU、または10μg)の両方のサプリメントの使用は、7年間で腎結石のリスクが17%増加した。一貫して500 nmol / L(> 200 ng / mL)を超える血清ビタミンD(25(OH)D)濃度は、潜在的に毒性があると考えられている。
過剰の日光暴露は、体が作成するビタミンDの量を制限するので、ビタミンD中毒の原因にはならない。上限を超える長期摂取(9歳以上で4,000IU/日、または100μg/日)は、健康への悪影響のリスクを高める。ほとんどの報告では、ビタミンD濃度の毒性閾値は10,000~40,000 IU /日(250~1,000μg/日)であり、血清25(OH)D濃度は500~600 nmol / L(200~240 ng / mL)であることが示唆されている。10,000 IU /日未満(250μg/日未満)の1日摂取量では毒性の症状は起こりにくいが、FNB(米国食事栄養委員会)は、全国調査データ、観察研究、およびビタミンD摂取量と血清25(OH)Dレベルがさらに低いと有害である可能性があることを示唆する新しい経時的な健康への影響を指摘した。FNB(米国食事栄養委員会)は、さらに低い血清レベル(約75~120 nmol / Lまたは30~48 ng / mL)はすべての原因による死亡率の増加、膵臓などの一部の部位でのがんのリスクの増加、心血管イベントのリスクの増加、高齢者の転倒や骨折の増加に関連しているのと同様に、約125~150 nmol / L(50~60 ng / mL)を超える血清25(OH)Dレベルは避けるべきであると結論付けた。FNB委員会は、5,000 IU /日(125μg/日)のビタミンD摂取が100~150 nmol / L(40~60 ng / mL)の血清25(OH)D濃度を達成したが、それ以上にはならない研究を引用した。この摂取値に20%の不確実性係数を適用すると、4,000 IU(100μg)の上限が得られ、FNBが9歳以上の子供と大人に適用した。

☆低カルシウム血症の症状

 ◎テタニー(筋肉のけいれん(痙攣))

 ◎ビタミンDの基準値(正常値)

 ◎ビタミンDの基準値(正常値)
ビタミンDとして25(OH)Dを測定している。1ng/mL=2.5nmol/L

25(OH)D

ng/ml

nmol/L

日本
BML

基準値

30~100

75~250

不足状態

20以上~30未満

50以上~75未満

欠乏症

20未満

50未満

米国
NCI

基準値

20以上~50未満

50以上~125未満

不十分

12以上~20未満

30以上~50未満

不足

12未満

30未満

Holick

推奨値

30~60

75~150

基準値

20~100

30~250

欠乏

20未満

50未満

中毒

150を超える

375を超える

 ★ビタミンD正常者の比率

 ビタミンD正常者はMiyamotoらによると 20%台しか存在しない。ビタミンDの不足・欠乏は決して稀ではない。

日本人のビタミンD値
ビタミンDとして25(OH)Dを測定している。1ng/mL=2.5nmol/L

正常

不十分

不足

25(OH)D

ng/ml

30~100

20以上~30未満

20未満

39―49歳 女性

21.0%

47.4%

31.6%

50-59歳 女性

24.7%

48.3%

27.0%

60-64歳 女性

27.7%

57.4%

14.9%

 ★ビタミンD推奨摂取量:1μg=40IU

対象

目安

上限

日本

18歳以上

5.5μg

220IU

100μg

4,000IU

妊婦

7μg

280IU

授乳

8μg

320IU

米国NCI

9~70歳

15μg

600IU

100μg

4000IU

71歳以上

20μg

800IU

 厚生労働省によると日本人ビタミンD摂取量は:平均値:7.5μg、標準偏差:8.0μg、中央値:3.8μgである。

注)国民のビタミンDの平均摂取量は目安には足りているが、これでは、現実的には多くの人、特に日に当たらない人や高齢者で不足する可能性が高い。
日本のビタミンD推奨摂取量は1日5.5μgだが、上限は1日100μgとしている。海外はもとより国内で多くの住民がビタミンD欠乏や不足に陥っている現状を考えると、1日5.5μgの摂取は不十分であろう。市販されている多くのサプリメントのビタミンD含有量を見ると、1日5.5μgと記載してあり、必要量の100%を充足していると記載している。
自分のビタミンD濃度がどの程度か知らずに、不足か欠乏か充足かを判断することはできない。また摂取するなら、1日何μgを摂取するかによってビタミンDが充足できるかが決まってくるだろう。ビタミンDを含む食品は限られており、補給するには日光に当たることが重要である。ビタミンD不足の予防には、高齢者では少なくとも1日10μg、ビタミンD不足があれば20μg程度は必要であろう。

 毎日30μg、1年間のビタミンD内服群では、 血液中のビタミンD(25-ハイドロキシビタミンD)濃度は平均21ng/mLから平均39ng/mLと統計的に有意に上昇した。

  1. ビタミンDのプラセボ内服群では、22から24ng/mLと統計的には不変であった。

  2. 血清カルシウム濃度は両群で不変であった。

    (日本)ビタミンDの18歳以上の摂取の上限は、100μg(4,000IU)である。

 ビタミンDと健康:米国国立がん研究所(NCI)によると、ビタミンD摂取量の増加に応じて血清25(OH)Dレベルが増加するが、その関係は明らかではない理由により非線形である。増加は、例えば、ベースラインの血清レベルとサプリメントの持続時間によって異なる。血清25(OH)Dを> 50 nmol / L(20ng/ml)に増やすには、ベースライン<50 nmol / L(20ng/ml)からレベルを上げるよりも多くのビタミンDが必要である。ビタミンDの投与量が1日あたり1,000 IU未満(25μg未満)の場合、血清25(OH)Dが急激に増加する。より高い、より平坦な反応は、より高い1日用量で見られる。用量が≥1,000IU /日(25μg/日以上)である場合、血清25(OH)Dの上昇は、摂取量40 IU(1μg)ごとに約1 nmol / Lである。600 IU /日以下(15μg/日以下)の用量での研究では、血清25(OH)Dの上昇は、ビタミンDを40 IU(1μg)摂取するごとに約2.3 nmol / L(0.92ng/ml)であった。
米国内分泌学会は、ビタミンDの臨床実践ガイドラインを発行し、カルシウム、骨、筋肉代謝に対するこのビタミンの効果を最大化するために、25(OH)Dの望ましい血清濃度は> 75 nmol / L(> 30 ng / ml)であると述べた。また、25(OH)Dの血清レベルを75 nmol / L(30 ng / ml)を超えて一貫して上昇させるには、成人では少なくとも1,500-2,000 IU /日(37.5-50μg/日)子供と青少年ではビタミン1,000 IU/日が必要であろう。

★15.ビタミンDの基礎知識

 ◎ビタミンDはビタミンD2からビタミンD7まである。

 ◎ビタミンD1は誤った化合物に命名していたので、その後取り消しになり、存在しない。

 ◎生理学的に重要なのは、ビタミンD2(エルゴカルシフェロール)とビタミンD3(コレカルシフェロール)のみである。ビタミンD2とビタミンD3は同等の作用と考えられている。

  1. ビタミンDの作用は腸管からのカルシウムの吸収を促進し、適切な血清カルシウムとリンの濃度を維持する。骨の石灰化(カルシウム沈着)を起こし、骨の成長や再構築に必要である。

  2. ビタミンDはカツオ、アンコウ肝、サケなどの魚類、キクラゲ、シイタケなどのシイタケ類に含まれている。

  3. ビタミンDは子供のクル病予防や骨軟化症を予防し、老人の骨粗しょう症を防ぐ。

  4. 春から夏にかけて、紫外線が多い正午頃に30分程、顔や手足を日光にさらすことで、十分なビタミンDが皮膚で生成される。

  5. ビタミンD3の投与量や摂取量の単位:1μg=40IU

    1. (μg=マイクログラム:100万分の1グラム)

    2. (IU=国際単位:international unit)

  6. ビタミンDの血液中の濃度の代わりに、ビタミンDの測定は25位水酸化ビタミンD3(25(OH)D3)の濃度を使用する:1ng/mL=2.5nmol/L

    1. (nmol/L=1リットル中に1ナノモル(10億分の1モル))

    2. (ng/mL=1cc当たりのナノグラム(10億分の1グラム))

  7. 以下は同じものである:

    1. 25位水酸化ビタミンD3

    2. 25-ヒドロキシビタミンD3

    3. 25(OH)D3

    4. カルシディオール(calcidiol)

  8. 25(OH)D3血中濃度の基準値

    • (ア)日本の基準値は30-100ng/mL

    • (イ)不足は、子供はくる病、骨軟化症、大人は骨粗しょう症の危険あり。

    • (ウ)過剰は、副作用の危険あり。

      1. 25-ヒドロキシビタミンD3または25(OH)D3は、ビタミンDの25位に水酸基(ヒドロキシ基、-OH)が付着した物質。

  9. 脂溶性ビタミンには、ビタミンA、 D、 E、 Kがある。脂溶性ビタミンは多すぎると過剰症を引き起こす。

  10. ビタミンD摂取は日本では成人で、目安5.5μg、上限100μg、または目安220IU、上限4,000IUを勧めている。

  11. ビタミンD摂取は米国では成人に15μg 、600IUを勧めている。

  12. ビタミンD2は植物由来

  13. ビタミンD2は酵母から得られるエルゴステロールが紫外線照射と熱異化反応で合成される。

  14. 日本人ビタミンD摂取量:平均値:7.5μg、標準偏差:8.0μg、中央値:3.8μg

 ★ビタミンD3の体内代謝

  1. ビタミンD3は人の皮膚で作られ、体中を循環する。

  2. 7-デヒドロコレステロール(7-dehydrocholesterol)はビタミンD3の前駆体(プロビタミンD3)である。

  3. アセチル CoA(アセチルコエンザイムA:アセチル補酵素A)から7-デヒドロコレステロールができる。7-デヒドロコレステロールは還元されるとコレステロールになり、ステロイドホルモンになる。

  4. (皮膚での代謝)7-デヒドロコレステロールは表皮に多く含まれ、太陽光の照射でプレビタミンD3に変化する。プレビタミンD3は体温でビタミンD3(コレカルシフェロール:cholecalciferol)に変化する。

  5. (血管内の移動)ビタミンD3は水には溶けないので、血液を循環するビタミンD結合たんぱく質(DBP: vitamin D binding protein)に結合し、ビタミンD3―ビタミンD結合たんぱく質となり、血管内の血流を流れる。

  6. (肝臓での代謝)ビタミンD3は肝臓に行くと、ビタミンD3の25の位置に水酸基(ヒドロキシ基、-OH)が付着し、25-ヒドロキシビタミンD3(25(OH)D3、カルシディオール、calcidiol)に代謝され、血中に出る。

  7. (血管内の移動)25-ヒドロキシビタミンD3(25(OH)D3)は水には溶けないので、血液を循環するビタミンD結合たんぱく質(DBP: vitamin D binding protein)に結合し、25-ヒドロキシビタミンD3―ビタミンD結合たんぱく質となり、血管内の血流を流れる。。

  8. (腎臓での代謝)25-ヒドロキシビタミンD3は腎臓に行くと、25-ヒドロキシビタミンD3に、さらに1αの位置に水酸基(ヒドロキシ基、-OH)が付着し、1α,25-ジヒドロキシビタミンD3(1,25(OH)2D3、カルシトリオール、calcitriol)に代謝される。

  9. (血管内の移動)1α,25-ジヒドロキシビタミンD3(1,25(OH)2D3)は体内で最も働くビタミンDであり、活性型ビタミンDとも言われている。1α,25-ジヒドロキシビタミンD3は水には溶けないので、血液を循環するビタミンD結合たんぱく質(DBP: vitamin D binding protein)に結合し、1α,25-ジヒドロキシビタミンD3―ビタミンD結合たんぱく質となり、血管内を流れる。。

  10. 1α,25-ジヒドロキシビタミンD3(1,25(OH)2D3)は腸管のカルシウムやリンの吸収を促進する。また副甲状腺ホルモンPTHの合成を阻害する。

  11. 副甲状腺ホルモンPTHは1α水酸化酵素を促進し1α,25-ジヒドロキシビタミンD3(1,25(OH)2D3)を作成する。1α水酸化酵素は低カルシウム血症や低リン血症によっても促進される。

  12. (体内)ビタミンD受容体は体内のすべての組織や細胞の核内に存在する。

  13. 1α,25-ジヒドロキシビタミンD3は標的細胞の細胞核内に存在するビタミンD受容体(VDR:vitamin D receptor)に特異的に結合し、ビタミンD依存性たんぱく質の遺伝子発現を制御し、必要な仕事を行う。体の全ての細胞が標的細胞で、全ての細胞に対する普遍的な仕事をしている可能性がある。

動物

7-デヒドロコレステロール
(ビタミンD3の前駆体)
(プロビタミンD3

紫外線と体温

ビタミンD3
(コレカルシフェロール)

植物

エルゴステロール

紫外線と熱

ビタミンD2